postheadericon フィリピン昔話:マリアとカニ

父親の後妻と連れ子らの陰湿なイジメに耐えながら、最後には王族と結婚する美女の出世物語「シンデレラ」。貧富の差が激しいせいか、フィリピン大衆向けのテレビドラマでは

貧民層出身の若く優しい娘
(主人公。美人だったり醜かったり)
    ↓
金持ちのイジメっ子からネチネチとやられる
(犯罪まがいの悪質なイジメだったりする)
    ↓
「ううん、私負けない」と、逆境に健気に耐える主人公
(恋人のサポートが入るが、途中で死んでしまうことも)
    ↓
ひょんなことから主人公が大出世
(実は富豪の隠し子だったとか、魔法で美人になるとか)
    ↓
イジメっ子らがギャフン
    ↓
めでたしめでたし


的なシンデレラ・ストーリーが主流になっとる。中には知識も経験もない小娘をいきなり大手多国籍企業の社長の座に座らせ、「今日から私が絶対的支配者」とか言わせる強引な展開もある。「社長ってのはね、ただ椅子にふんぞり返って、社員に「サー」とか「マム」とか言われてちやほやされながら、やりたい放題ができちゃう大金持ちなの。面倒なことはゼーンブ社員がやってくれるのよ」みたいなイメージを助長させとるようで、ワシ的には好かんのじゃがな。

さて、童話「シンデレラ」には様々なバリエーションが存在しとるようじゃが、フィリピン版シンデレラもちゃんと存在しとる。今回はその物語を紹介しよう。


昔々、あるところにマリアという名の若く美しい娘がおった。

しばらく前にマリアを誰よりも愛してくれとった母親に死に別れてしまい、寂しい毎日を過ごしておったところに、父親が後妻を迎えた。後妻には連れ子の娘が2人おったのじゃが、この2人は揃ってマリアの美貌を妬み、家事全般をマリアに押し付け、いちいち難癖をつけては暴言、ビンタ、縄、鞭、ろうそく、浣腸などでネチネチといたぶり、飯もろくに食わせんかった。

ここまでは、従来のシンデレラ物語とほぼ同じ展開(?)じゃな。ちなみに父親の出番はこれでお終いじゃ。気の毒じゃが。

ある日、いつものように朝食抜きで井戸の水汲みをやらされ、あまりの空腹と重労働に耐え切れず、井戸端にしゃがみ込んでシクシクと泣いとったところ、近くで「マリア、マリアや」と呼ぶ声がする。忘れもしない、今は亡き母の懐かしい声。「ママ?ママなの?」

マリアがふと声のした方向に顔を向けると、草むらにジョリビーのチキンジョイ(ライスとコーク付き)がさりげなく置いてあった。そして再び「さあ、これを食べて元気におなりなさい」という声が。

グレービーソースをかけるのも忘れ、夢中でチキンをほおばるマリア。が、何者かの気配を感じてビクッとした。

姉だわヤバイ!ぶたれる!

































































カニ 「落ち着いてマリア。アタシはママよ。典型的な幽霊の姿で出てこられちゃ怖かろうと思って、このカニにとり憑いてるの」

マリア「その姿でも充分怖いんですけど...」

カニ 「とにかく、今後はアタシがあなたを守ってあげるから、安心なさい」

マリア「私の代わりに水汲みとか、洗濯とか、皿洗いとかしてくれるの?」

カニ 「アンタ、カニのアタシにそんなことさせるつもり?動物愛護協会に訴えるわよ?」

マリア「...」

カニ 「いいから、アタシに任せなさい。悪いようにはしないから。わかった?」

そう言うと、カニママはカサカサッと藪の中に姿を消した。


次の日、マリアが遠く離れたスーパーマーケットにお使いに行かされとる間に、チキンジョイを背負ったカニママが再び姿を現し、台所に忍び込んだ。

ところが...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 マリアが家に帰り着いた時には、継母と姉たちに食われちまったカニママが、殻だけの無残な姿でゴミ箱に捨てられとった。

マリア「ああ、ママ、なんて姿に...」

マリアがカニママの亡骸(亡殻?)を抱いて泣いていると、耳の奥で再びママの声がした。

ママ「泣かないでマリア。それよりも、そのカニの殻を集めて裏庭に埋めて頂戴」

マリア「埋めると、どうなるの?」

ママ「ナ・イ・ショ♪ウフフッ」

マリア「...」

とりあえず、マリアはママの言葉に従い、カニの殻を裏庭に埋めた。


翌朝。


マリアが裏庭に出てみると、カニの殻を埋めた場所に大きな木が生えとった。そしてその木には、いかにもうまそうな黄金(こがね)色の果実が鈴なりになっとったんじゃ。

ちょうどそこに、立派な身なりをした水嶋ヒロばりのイケメンが通りかかった。果実の発する甘い香りに惹かれたイケメンは、アイドルを見つけたファンのようにキャーキャー騒いどる2人の姉に近づき、果実を分けてくれるよう頼むのじゃが、まるで果樹の周りに強力なバリヤーが張られているかのごとく、見えない壁に阻まれて近づくことができない。

何とか果実を手に入れてイケメンに気に入られようと、野獣のような形相でライダーキックなどを繰り出し、懸命にバリヤーを破ろうとする姉たち。そしてそんな姉たちに怪訝な顔を向けながらフツーに果樹に近づき、果実を摘んでむしゃむしゃと食い始めるマリア。目の前に繰り広げられとる異様な光景に怖気づきながらも、果実を分けて貰おうとマリアに近づいたイケメンは、たちまちマリアの美貌の虜になってしもうた。

その後マリアとイケメンは結婚し、幸せに暮らしたということじゃ。めでたしめでたし。


参考文献:

The Philippine Myth on Maria and the Crab

http://www.philippinesinsider.com/myths-folklore-superstition/the-philippine-myth-on-maria-and-the-crab/



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